伯爵散文「侯爵夫人博士女史の婚礼初夜」




今は昔、エセックスカウンティの機関城にて、
侯爵と博士女史の盛大な結婚式が執り行われた。
社交界からも多くの人が参列し、2人の門出を心から祝った。

博士女史は退屈の余り、眠り掛けていた為、晩餐披露宴も無事に終了した。
そして、夜も更け、2人切りの甘い時間が訪れる。


4隅の室内骸炭燈が博士女史の新しい寝室を淫靡に照り浮かべる。
「ああ、今日は疲れたわ。片田舎 堅苦しくって 肩凝った、かしら」
「うん、揉んであげる!」
「いやよ、私の体に気安く触れないで」
「うん、触れない!」

「勘違いされるといやですので、釘を刺しておきますわ。
 貴方が、どうしても、私の膣内で射精なさりたいと仰るから仕方なくってよ」
「うん、したい!」
「はあ、犬の交尾に付き合わされるなんて、大概だわ」
「うん、大概だね!」

「私はね、この2年、まあ、機関漬けでしたけど、少しはですわね、
 ほんの少しは、医学書を読んで勉強しましたのよ」
「僕は慣れない挨拶回りで天手古舞で……」
「それもこれも、貴方が言い出したことですのに! 駄犬! バカ犬!」
「何か、申し訳ない……」
「紳士と言い張るなら、娼館で女の1人や2人、物にして来なさいよ!」
「初めては君しか考えられない! いや、生涯、君だけだ!」
「阿呆みたいに真面目なんですの! 気持ち悪いわ、紳士の純潔は表だけにして頂戴」
「そう言うものなのかな」


博士女史はベッドの際に姿勢を正して座り、居心地が悪そうに、膝を握り拳分だけ開いた。
「もう、結構でしてよ! 早速、始めましょう。今、私、ドロワーズは履いていませんの」
「ド、ドロア? ズ?」
「貴方のぱーぷりんなどてかぼちゃみたいなものよ」
「かぼちゃ?」
「ですから、まず最初は、犬のように跪いてお嘗めなさい」
「え? 何を? 足かな?」
理解出来ないまま、博士女史の前に膝を突いた。
「すかぽんたん! あ、あれよ! その、股の間を」
「そんな神をも恐れぬ所業、僕が君にしても良いのかな」
「念入りに拭きましたから、とても清潔で臭いませんことよ」
「君の股なら臭くたって平気さ」
「臭くないって言ったでしょう!」
侯爵の顔面を思い切り踏み飛ばした。
「何か、申し訳ない……」

「もう一度よ、跪きなさい」
「仰せのままに、陛下」
「陛下と呼ばないで頂戴! 博士女史の名は陛下の名より神聖なの!」
「……勿論! 僕にとってはだけどね」
侯爵は博士女史の室内履きを優しく脱がせ、恭しく、形の良い華奢な足を取り、甲に口付けを。
「まあ、お行儀の良い犬だこと」

そして、裾を持ち、徐々に捲って行った。桃色の膝が曝け出され、青白く、極めて柔らかい腿が覗く。
「ああ、美しい眺めだ、とても綺麗で色っぽいよ」
侯爵は相当に緊張してぎこちないが、博士女史は羞恥で微かに震えている。
そっと顔を近づけると、上気した体熱がもわりと感じられた。そして、内腿をつつと、舌でなぞる。

「じゃあ、もう少し開いても良いかな?」
博士女史は恥ずかしさの余り、一杯一杯である。
「ちょっとお黙りなさい!」
瞼を強く閉じ、大胆に脚を開いた。

今にも卒倒しそうな侯爵、食い入るように視線をそこに集めた。
「あ、ああ、夢にまで見た桃源郷、なんと可憐なソルボンヌ!
……と言うか、3気筒3段階膨張複式機関の配管のごとく複雑で、何が何やら」
「喋る犬には猿轡を噛ましますわよ!」
「何か、申し訳ない……」
「私が各部位の説明をして差し上げるから、その通りにして頂戴」
「そして、忝い……」


「外側の膨らんだ土手、焦らすように、そう……あ、くすぐったい」

「その内側の縮れ膜、軽く吸うように、ああ、そう、お利功さん」

「中央上端、丁寧に撫で探ると、小さな突起物があるわ。あ、やば、ここは後にして」

「その下、中央やや下部にある穴が貴方の大好きな膣よ!」

「これが、あの、噂に聞いた! まさに神秘! 赤の洞窟!……で、その下にある穴は何だい?」
「はあ、今直ぐそこの窓から飛び降りて、100遍ほど人生をやり直して欲しいですわ」
「何か、申し訳ない……」

「もう良いわ、先ほどの突起物を犬みたいにぺろぺろお嘗めなさい!」
従順な侯爵が情熱的に舌を這わす。指を噛み、恍惚に耽る博士女史。

「釜揚げ馬鈴薯のうす塩味みたいで美味だよ! 愛液で濡れて来たね、気持ち良い?」
「そこだけ詳しいとかお止しなさいよ、もう! 良くなかったら、蹴飛ばしているのかしら!」
博士女史は耽溺を無表情で耐える為、侯爵の髪を強く掴み撫で、股に押し付けた。

「あ、ああ、駄目かも! ふわふわの、熱く滑って、挿れたら最高に気持ち良さそうな君のここに、
 僕のがぬるぬる飲み込まれると思うと、もう、射精しそう……」
「何で、貴方が達するのよ、お漏らし粗相犬め! 躾して差し上げてよ!」
結局、再び、侯爵を蹴り転がして、裾を下げ直した。


「服を全て脱いでベッドの上に膝立ちなさい。まずはお座りからよ。あっちを向きながらかしら」

指示通りに、服を脱ぎ、ベッドの隅に置いて、怒張させた下半身を壁に向けて構えた。
暫く、衣擦れ音が続くと、侯爵は背中に嫋やか肉のしっとりとした温かさを覚えた。
「殿方の体って、固くって逞しいのですわ」
博士女史が耳元で囁き、腕、腹、太ももと擦り撫でた。
溜まらず、振り返ろうとする侯爵。
「私を見ないで。貴方から晒しなさい。後で存分と堪能出来るのだわ」
「火は消さなくっても良いの?」
「貴方の阿呆面も拝みたいのかしら。あと、そうね……」

博士女史は侯爵の腰に手を添え、左側から股を覗き込んだ。
「あら、まあ、これが貴方の粗末な性器なのだわ!」
物珍しい生物を観察するように、息が掛かるほどの距離で眺め回す。
「こんなものが私の体中に入るなんて、何て悍ましいのかしら」
「何か、申し訳ない……」

「まあ、見ようによっては、可愛いと言えなくもないわね」
ちょんちょんと、人差し指の背で突いた。
「お汁が滲んでますわよ、どんなお味がするのかしら」
博士女史は右の髪を耳に掛け、潤んだ唇を開き、舌を少し前に突き出した。

期待に鼻を膨らませる侯爵を上目でちらりと見遣る。
「と、して貰えるとお思い? いやよ、汚らわしい」
「そ、そうだよね……」
「私が口内に含んだら、射精するのかしら。初めては膣内に欲しいわ」
侯爵は息を飲んで、何とか堪えた。

「もう、限界みたいだわ。そこに横になって頂戴」


博士女史が気怠い色香を振り撒きながら、馬乗りに跨って、侯爵を見下ろした。

縊れ上がった腰、薄い腹、房は小振りだが、つんと上を向いた、乙女撫子の乳首と
繊細な肩に乗る得意気な真顔に印象的な冷めた上から目線が侯爵の骨を抜いた。

「私、どう、かしら?」
「神話絵画だよ! ヴィーナス爆誕! 女神降臨! 何と慎ましやかで可憐極まる乳!」
「貴方、他の淑女方にそんな誉め方は絶対になさらないことよ」
「何か、申し訳ない……」

博士女史は侯爵の手を取って、乳房の方へ導いた。
「ほら、触って良くってよ。まあ、今の貴方ではお上手な愛撫は無理かしら」
「ああ、良く分からないけど、溜息の出る、吸い付くような柔らかさ。
 君がこんなに素晴らしいものを持っているなんて、神の思し召しだよ」

「神格存在である私の乳を揉み、ありがたい膣で射精が出来ることを光栄と存じなさい」
「はい! 身に余る光栄であります!」

「宜しい。では、そろそろ、ご褒美を差し上げようかしら」
「え? このまま? 君が上なの?」
「あら、いつも、貴方は私に見下されていてよ」
「たまには、君を下に愛でさせて欲しいものだね」
「初戦は貴方の負け戦なのかしら。私を抱きたかったら、次戦にして頂戴」
「そうだね、君に溺れて、先導は出来そうにない。紳士失格だよ」
「所詮、犬よ、犬。お預け喰らって、尻尾振ってなさい」

鈴口を膣口に宛がい、お互いの粘膜が触れ合うと、心拍は最高潮まで高まった。
しかし、博士女史はこのような状況でも、やや論理的。
粘液による摩擦係数の確認と最適な挿入角度を模索し、微調整を繰り返している。
「ああ、もう……堪えられない、かも」
「我慢なさい! 膣内で射精なさるのでしょう? もう少しで、完璧ですわ!」
「2、3、5、7、11、13……」

「これで、どうなの? このまま腰を下ろして欲しいのかしら?」
「ああ、ああ、君が欲しい! 欲しくて堪らないんだ!」
「いいえ、もっと、お手! お代り!」
「もう君しか見えない! いや、て、天国も見える! おお、神よ! 我を導き給え!」
「良いわ、昇天なさい! そのだらしのない顔を間近で凝視して差し上げてよ!」

亀頭が膣口を押し広げ、減り込み埋まって行く。
雁首が中に収まると、耐え切れず、早々に射精し始めた。
博士女史は破瓜の痛みを頬の内側を噛んで散らしながら、果敢にも押し込んだ。
覚悟は前から決まっていた。慎重に、しかし、着実に進み、腰を密着させ、1つに成った。
侯爵は失神寸前で、博士女史にしがみ付いて、まだ射精をし続けている。
達成感と痛みと想いを下腹部全体で暖かく感じ、侯爵の頬に両手を添えて、軽く口付けをした。

「これが私の誓いの証明よ! 博士女史の神聖、その身も以って、篤と味わったかしら」
「君の神々しさに腰が抜けちゃって動けないよ、僕の可愛い博士女史」
「貴方の情けなさには声も出ないわ。侯爵は早漏で候、かしら」
「はは、上手い! スミス君、クッション持って来て!」
「ふざけないで! 少しの間、このままでいて欲しくってよ」
「ああ、今も脈動して、君の体内の熱さとうねりを心地良く感じるよ」
「良く出来ました。何度も我慢して偉かったわ、良い子ね」

暫し、繋がった後、博士女史は力尽きるよう、侯爵の隣に横になった。
「あら、結構、汚れちゃったわ。替えのシーツはご用意しておきましたから、お取替なさい」
「わ、血が! 血が出てる! 僕の可愛い博士女史が失血死しちゃう! 爺――」
博士女史は渾身の力を込めて、躊躇なく張り手を振り抜いた。
「正直、縊り殺してやりたいのかしら」

「元気で良かった。 痛かったかい? 気付いてあげられなくって、申し訳ない」
「貴方の粗品で、この私に苦痛を与えた、なんて思い込むのは、烏滸がましいにもほどがあるわ」


胸の前で手を組んで、痛涙を誤魔化し、瞬く博士女史の喉元に、頭を預ける侯爵。
「ありがとう、とても気持ち良かったよ。君と結婚出来て幸せだ、僕の可愛い博士女史」

無表情で愛おしそうに侯爵の髪を撫でる。
「今日は貴方に侯爵夫人の名を与えていただいたわ。そして、私は貴方に純潔と誓いを。
 今宵はまだ浅いかしら。今度は、私に女の悦びを与えてくださいな」



2018.3.9<初出>


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